ストーリーは単純で、「マフィアの賭場を襲った犯人の落とし前をつけるため、組織が雇ったジャッキー・コーガンという殺し屋が犯人を次々に始末していく」というもの。
どんでん返しもなければ、かっこいいアクションもなく、ひねりが効いた展開もない。裏社会に生きる者たちの会話を楽しむような感じだ。また、犯行時の演出や構図に結構工夫があり、リアリティと緊張感あふれるシーンが多い。
というわけで、かなり見る人を選ぶ作品だと思う。ドラッグは当たり前のように出てくるし、リンチシーンはかなり痛々しくて目をそむけたくなるほどだし、殺害シーンは血まみれである。
この作品の一つの特徴として、映画の冒頭から、アメリカ合衆国の大統領たちの映像や逸話がところどころに散りばめられている。バラク・オバマ大統領の演説の映像もあれば、ブッシュ大統領に言及するニュース音声もあるし、映画の最後には、主人公であるジャッキー・コーガンがトーマス・ジェファーソン元大統領について語っている。
表の世界の(建前上は)代表格である大統領や政治の世界と裏の世界の顔であるマフィアや殺し屋の世界を巧妙にリンクさせることにより、アメリカ社会の建前と現実の乖離を表現しているのだろうか。
ブラッド・ピットが、主人公ジャッキー・コーガンを演じているわけだが、好演していると思う。冷酷でありながら、規律を大事にしており、表の社会を不必要に荒らそうとせず、カタギの人間には威張らずに普通に接する。まあ、昔から一般大衆に好かれるような裏社会の人間の特徴を備えている。
結構グロいシーンがあるけれど、まあそういう映画だと覚悟すれば、私にように血を見るのが苦手な人でも見ていられると思う。ただ、無意味かつ馬鹿げたチンピラのやり取りが映画の大半を占めているので、そこが楽しめられるかどうか。役者の演技力に大きくゆだねられている作品であり、また役者たちはみんな好演している。だから、見ていられる映画だ。
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